はじめに:便利だけど悩ましい“デジタル機器”との付き合い方
「タブレットばかり触っている」「スマホを取り上げたら癇癪が起きた」
放課後等デイサービスの支援現場でも、タブレットやスマートフォンの扱いに悩む声は少なくありません。
一方で、正しく使えば学び・支援・安心感のツールにもなり得ます。
この記事では、放デイにおけるスマホ・タブレットとの“上手な付き合い方”について、支援者目線で整理します。
なぜ子どもはタブレット・スマホに夢中になるのか?

以下のような理由から、発達特性のある子どもほどデジタル機器に強く依存しやすい傾向があります:
■ 視覚・音の刺激が心地よい
→ アニメ、ゲーム、タップ音、画面変化などが強く興味を引く
■ コミュニケーションが苦手でも「操作できる達成感」
→ 現実世界よりも“自分のペースでコントロールできる世界”が安心できる
■ 不安・イライラの“逃げ道”として定着
→ 気持ちが高ぶった時に触ることで落ち着く経験が積み重なる
放デイでの“使い方のルールづくり”が重要
1. ■ 利用目的と時間を明確にする
- 例:「活動が終わってから10分間だけ」「タブレットは○○学習アプリだけ使用OK」など
- “なんとなく使う”の禁止ルールで依存を防ぐ
2. ■ 一人ひとりに合わせたルール設計
- 「触る前に声かけ」「時間が来たらアラームでお知らせ」など、その子に合った切り替え方を用意
- 他児とのトラブルを避けるため、個別使用・共用不可の設定も効果的
3. ■ トラブル時の対応を事前に決めておく
- 「終了時に泣く・怒る」が予想される場合は、代替の“次にすること”を用意(例:おやつ・読み聞かせなど)
支援に活かす!タブレット・スマホのポジティブな活用法
■ 視覚支援ツールとして
- スケジュール表示、感情カード、写真提示アプリで見通し支援に
- アプリを使った“今の気持ち”表現も効果的
■ 教育・SST(ソーシャルスキルトレーニング)教材として
- 順番待ちゲーム、あいさつ練習動画、道徳的なアニメーションなどで体験型学習を促進
■ モチベーションのごほうびとして
- 「○○ができたら、3分動画OK」など、ごほうびとしての使い方で“やる気”を引き出す工夫に
家庭との連携で「使い方の一貫性」を保つ
- 家でも使い放題 → 放デイで制限 → 子どもが混乱
- 家庭での使い方やルールを事前にヒアリングし、放デイとすり合わせることが重要です
**「家と施設、どちらでも同じルールで使える」**という安心感が、子どもにとっての混乱を防ぎます。
注意すべき点:使いすぎがもたらす影響とは?
- コミュニケーション機会の減少
- 身体活動の不足
- 切り替え困難・依存傾向の強化
- 睡眠・情緒の乱れ(特にブルーライトの影響)
便利な道具である一方で、過度な使用が子どもの発達を妨げるリスクもあるため、「使い方」を育てる支援が大切です。
まとめ:タブレット・スマホは“育てるべきスキル”の一部

現代の子どもたちにとって、スマホやタブレットは切り離せない存在です。
だからこそ、「使わせるか、使わせないか」ではなく、“どう使うかを学ばせる”視点が支援には必要です。
ルールを守る力、時間を意識する力、切り替える力。
それらを“支援の中で育てる”という意識が、放デイの役割でもあります。
タブレットは「悪者」ではありません。
上手に活用することで、子どもの安心・学び・自信に変えていけるツールなのです。