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質問してもオウム返し…会話が成立しにくい子どもへの理解と支援法

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1. はじめに:なぜ会話が成立しにくいのか

放課後等デイサービスの現場で、質問を投げかけても オウム返し(同じ言葉をそのまま返すこと) が続いて、思うように会話が成立しない――そんな困りごとを抱える支援者や保護者は多いでしょう。

一見すると「わざと答えない」「協力していない」ように見えてしまいがちですが、実はこれは発達過程や認知の特性、言語理解の仕組みに関係する現象であり、支援の設計で改善できます。

本稿では、なぜオウム返しが起きやすいのかを理解し、会話が成立しやすい支援の工夫を丁寧に解説します。


2. 「オウム返し(エコラリア)」って何?

「オウム返し」とは、相手の言葉をそのまま繰り返す言語パターンのことです。発達支援や言語発達の専門用語では「エコラリア(即時エコラリア・遅延エコラリア)」とも呼ばれ、聞いたことばをそのまま返すという特徴を持ちます。
言葉を学ぶ過程では一時的に見られることもあり、必ずしも発達障害だけに限らない現象です。


3. なぜオウム返しが続くのか?背景を紐解く

3-1. 発達過程における言語獲得のひとつ

幼児期〜児童期において、「聞いた言葉を模倣する」ことは言語獲得の基礎プロセスのひとつです。
言葉の意味や文法を覚え始める段階では、まずは真似してことばを使うという過程が必要とされます。この模倣段階がやや長く続くと、相手の質問に対してオウム返しが目立つことがあります。

3-2. 言葉の意味理解と模倣の関係

オウム返しが起きる背景のひとつに、「相手の言葉がまだ意味として十分理解されていない」ということが考えられます。
この場合、実際には意味を伴わない“模倣”が繰り返されやすく、質問に対しても音として聞いたものを返しているだけということがあります。

3-3. 発達特性(ASD・衝動・抑制困難)の影響

発達障害スペクトラム(ASD)のある子どもでは、言語コミュニケーションの質的な違いが見られることがあり、オウム返しが比較的長期化することがあります。また、衝動性・切り替え困難が伴う場合、即時エコラリアが続いてしまうこともあります。


4. 質問が成立しにくいときに気づきたい「サイン」

単なるオウム返しの中にも、次のような特徴が見られることがあります:

  • 質問の意味を理解できていない
  • 回答はしたが、その後に会話が続かない
  • 同じ言葉の繰り返しが多い
  • 前日の会話を急に持ち出す

こうしたパターンは、言語の理解や応用がまだ発達途中であることを示唆しています。


5. 放課後等デイサービスでの支援ポイント

放デイでの支援は、単に「言葉を増やす」ことを目的にするのではなく、次のポイントで設計することが大切です

  • 子どもの発話を「否定しない」「受け止める」姿勢
  • 意味の成長段階を踏まえたステップ支援
  • 視覚支援や具体例を多く使う
  • 聞き返しを促す支援
  • ボディランゲージや絵カードを併用する

これらを組み合わせることで、徐々に会話が成立する力を育てます。


6. 現場で使える具体的支援方法

✔ ① オウム返しを肯定しつつ意味を引き出す

オウム返しをそのまま否定するのではなく、「それはこういう意味?」と問い返しや言い換えを加えることで、意味理解につなげます
たとえば「今日は何したい?」→「今日は何したい?」と返されたら、「そうだね、『何したい?』って言ったね。じゃあ遊びたいの?」と促す形式です。

✔ ② 質問や応答を視覚化する

視覚的な質問カードやテンプレートを使うと、言葉だけよりも理解が進みやすくなります。例えば「好きな遊び」「次の活動」などを絵やアイコンで示すと、会話のキャッチボールが成立しやすくなります。

✔ ③ 徐々に言葉の自由度を高める練習

最初は選択肢を2つにする、次に3つ、というように、段階的に負荷を上げることで、言葉の幅・応用力を育てます。
このステップを繰り返すことで、オウム返しだけではない実質的な応答が育ちます。

✔ ④ 身振り・表情・行動を絡めたコミュニケーション

口頭だけでなく、ジェスチャーや表情、身体の動きと組み合わせることで、意味の理解が進むことがあります。これは言語単体よりも直感や感覚を刺激し、子どもの表現の幅を広げます。


7. ケーススタディ:実践例に学ぶ支援の工夫

事例A:問い返し支援で意味理解を促進した例
放デイ利用のBくん(小2)は、質問に対してオウム返しが続いていました。支援者は「今日は何する?」の答えに対し、絵カードを見せながら一緒に応答を選択する支援を行いました。
3週間後、Bくんは絵を見ながら「遊ぶ」と自分の言葉で返せるようになり、会話が成立する回数が増えました。


8. 保護者との連携で進める家庭での支援

家庭でも支援者と同じステップを取り入れることで、子どもの言語発達は安定します。
保護者には次のような方針を共有します:

  • 子どもの発語に対して「まず受け止める」姿勢
  • 同じ問いを繰り返すときは視覚支援を追加する
  • 意味のある応答を促す問いかけを繰り返す

この一貫した支援方針が、子どもにとって安心できる環境をつくります。


9. まとめ:会話力は育つ──支援の軌跡

オウム返しは、単なる「会話が成立しない状態」ではなく、発達段階にある言語学習プロセスの一部であると理解することが重要です。
支援者が「受け止める → 意味付けを促す → 段階的支援」を行うことで、会話は少しずつ成立していきます。

放課後等デイサービスは、こうした支援プロセスを安全・安心な環境で提供できる場です。
オウム返しを否定するのではなく、相手を理解するためのヒントとして捉え、共に育てていく視点を大切にしましょう。


参考

「障害児通所支援ガイドライン」:厚生労働省
「発達障害支援の手引き」:厚生労働省


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