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他所の物を勝手に触る行動の意味と支援──好奇心と安全を両立する関わり方

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1. はじめに:なぜ許可なく触る行動が起きるのか

放課後等デイサービスで、 許可なく他人の物を開けたり触ったりする行動 はしばしば見られます。一見すると単なる「わがまま」や「ルール無視」に見えることがありますが、子どもの行動には必ず背景や意味があります。大事なのは、叱るだけで終わらせず、 その行動の理由を理解し、適切な支援につなげること です。


2. 行動の背景を読み解く

2-1. 好奇心と探究行動の発達的意味

子どもは成長過程で、 「見る → 触る → 確かめる」 という一連の動作を通じて世界を理解します。これは発達心理学の視点では、知識や感覚を得るための基本的なプロセスです。特定の物に触れたいという行動は、学びの入り口であり、探索・探究への第一歩とも言えます。そのため、単に禁止してしまうだけでは、せっかくの探究心を抑え込み、学びの機会を奪ってしまう危険があります。

2-2. 実行機能・抑制コントロールの未成熟

物を勝手に触ってしまう背景には、 抑制コントロールの未成熟や実行機能の弱さ が関係することもあります。実行機能とは、衝動を抑えたり、注意を切り替えたりする能力です。幼児期〜児童期に発達するものですが、特性によってはこの部分が弱いため、先に「触りたい」という欲求が行動として出てしまうことがあります。

2-3. 発達障害特性と衝動行動

特性のある子ども、とくに ADHD の傾向がある子ども は、衝動・探索行動が強く出る場合があります。外から見れば規範を逸脱しているようでも、本人の内部では「世界の仕組みを知りたい」という強い動機が働いていることがあります。抑制のコントロールが難しいため、許可なく触る行動が出やすいことがあり、これを理解した支援が求められます。


3. 放課後等デイサービスでの支援ポイント

  1. 禁止ではなくルール学習を促す
     単に「触ってはいけない」と言うだけではなく、「なぜ触ってはいけないのか」「どうやって確認するのか」といったルールそのものを理解できる支援が必要です。
  2. 環境整備と選択肢の提示
     子どもが触ってよい安全な物・触ってはいけない物・共用物を 視覚的に分ける工夫 をします(例:触って良い教材ボックスを用意)。
  3. 言語化のサポート
     行動の前後で「どうして触りたかったの?」と問いかけ、感情や理由を言葉にする練習を支援します。

4. 現場で使える具体的な支援方法

▶ 具体例①:ラベルで区別する

教室内の物を カラーラベルやマークで区別 することで、「触っていい物」と「触ってはいけない物」を子ども自身が理解しやすくします。視覚的な支援は、発達特性のある子どもに特に有効です。

▶ 具体例②:許可を得る練習

「触ってもいい?」と職員や友だちに 許可を取る行動を練習 します。許可を取れたら褒める・シールを貼るなど、ポジティブな強化を用います。

▶ 具体例③:代替の探究活動を用意する

好奇心を満たすための 安全な探究ルート を準備します。たとえば、感触ボックス、探究カード、実験キットなど、探索・観察を促す教材を用意して、正の興味を育てます。


5. 保護者との連携と家庭での生活支援

家庭でも、子どもの触覚・探索行動を安全に満たせる 環境設定・ルールの共通化 が重要です。保護者にも以下のようなポイントを共有します:

  • 許可を取る練習を日常生活で一緒に取り入れる
  • 探究心を満たす「触っていいもの・時間」を設定する
  • 安全な環境・危険物の管理を行いながら好奇心を支える

このように保育・放デイ・家庭の3者で一貫した支援方針を持つことで、子どもの社会性・ルール理解が促進されます。


6. まとめ:好奇心を育てつつ社会性も育む支援

「許可なく他所の物を触る」という行動は、単なる“問題行動”ではなく、 好奇心・学びの入口であることが多い という視点が鍵です。禁止・叱責だけではなく、発達特性・衝動制御・探究行動を理解し、環境整備・言語化支援・社会的ルール学習を組み合わせる支援が必要です。

放課後等デイサービスは、安全で構造化された環境の中で、子どもの 好奇心を尊重しながら社会性・ルール理解を促す場 として機能できます。これは、子どもの自立・社会参加の基礎につながる大切な支援です。

参考

「障害児通所支援ガイドライン」:厚生労働省
「発達障害支援の手引き」:厚生労働省

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