1. はじめに:「分析」で終わらせない支援を目指して
放課後等デイサービスの現場では、
子どもの「困った行動」を分析し、背景を理解することが大切だと分かっていても、
実際には「分析で止まってしまう」ケースが少なくありません。
行動の理解を“次の一手”に繋げるためには、
機能的アセスメントの結果を、日々の支援計画に反映する力が求められます。
本記事では、
「どう支援計画に組み込むのか?」
「どうチームで共有し、実践に落とし込むのか?」
その具体的な手法を、現場目線で解説していきます。
2. 機能的アセスメントの目的を再確認

まず、アセスメントの目的は“行動の原因究明”ではなく、
「子どもがより適応的な行動を選べるようにすること」です。
したがって、支援計画では以下の3つの視点が鍵となります。
- 行動の機能(理由)を踏まえた支援方針
- 不適切行動に代わる望ましい行動(代替行動)の明確化
- 支援者全員が同じ対応で一貫性を保つこと
3. 支援計画に落とし込む3ステップ
ステップ①:行動の仮説を支援目標に変える
分析で得られた「行動の機能(理由)」をもとに、
支援目標を具体的かつ観察可能な形で設定します。
たとえば、
| 行動 | 機能 | 支援目標の例 |
|---|---|---|
| 課題中に席を立つ | 回避 | 「分からない時に“助けて”と言える」 |
| 他児を叩く | 注目 | 「人に頼む時は“言葉で伝える”」 |
| 奇声を上げる | 感覚 | 「ストレス時に“深呼吸”で落ち着ける」 |
支援計画書には、「行動の背景」と「支援の目的」をセットで記載します。
ステップ②:支援内容を“行動前後”で整理する
支援内容を「行動の前」「行動中」「行動後」に分けることで、
支援の具体性と一貫性が高まります。
| 段階 | 支援内容の例 |
|---|---|
| 行動の前(予防的支援) | スケジュール提示・選択肢の提示・予告の活用 |
| 行動中(代替行動支援) | 言葉やカードで要求を伝える練習・サポート声かけ |
| 行動の後(結果の工夫) | 適切な行動に注目・強化、望ましくない行動は淡々と対応 |
これにより、支援者全員が“同じ行動支援の地図”を持てるようになります。
ステップ③:実施→記録→評価→修正のサイクルを回す
支援計画は“作って終わり”ではなく、
「PDCAサイクル」で改善し続けることが大切です。
- Plan(計画):支援方針・方法を立てる
- Do(実施):日々の支援で実践する
- Check(評価):行動の変化を観察・記録する
- Act(修正):結果を踏まえて支援内容を見直す
この流れを月1回程度のチーム会議で共有することで、
“計画が現場で生きる”支援体制が整います。
4. 実践事例:支援計画への落とし込みの工夫
事例①:「片付けを拒否して泣く」Aくん
- 機能:活動の終了を避けたい(好きな活動を続けたい)
- 支援計画:
- 活動前に「あと5分」「次はおやつ」と視覚的予告を提示
- 終了後に「次の楽しみ」を設定し、切り替えを支援
- 片付け行動ができたら肯定的フィードバックで強化
結果:予告に慣れることでパニックが減少。泣かずに片付けに移行できるようになった。
事例②:「他児を叩く」Bくん
- 機能:注目・関わりを得たい
- 支援計画:
- 他児とのやり取りをスタッフが仲介してモデル提示
- 関わりたい時の代替行動(声かけ・タッチ)を教える
- 適切な関わりができた際に即座に承認・注目を与える
結果:暴力行動が激減し、「○○くん遊ぼ!」と声をかけられるようになった。
5. 支援計画は“書くこと”より“活かすこと”
放課後等デイサービスでは、「個別支援計画書」が義務づけられていますが、
形だけの書類になってしまうケースも少なくありません。
本来の目的は、
「行動の理解をもとに、子どもが過ごしやすくなる支援を継続すること」です。
そのためには、
- 現場スタッフ全員で共有できる“わかりやすい言葉”で書く
- 家庭との情報共有を定期的に行う
- 計画を“子ども自身が理解できる形”に翻訳する(絵カード・スケジュールなど)
この3つを意識するだけでも、支援の一貫性と効果が大きく変わります。
6. まとめ:行動理解のゴールは「支援の質」を高めること

行動分析は、子どもを評価するためのものではなく、
「より良い支援を設計するための道具」です。
分析結果を支援計画に落とし込むことで、
・子どもが安心して過ごせる環境が整う
・支援者間の対応が統一される
・家庭との協働がスムーズになる
行動の“意味”を読み取り、それを“支援”に翻訳する。
それこそが、放課後等デイサービスが果たすべき専門性の核といえるでしょう。


【参考】
厚生労働省:「障害児通所支援ガイドライン」

