1. はじめに:行動の「原因」を見抜く視点が支援を変える
発達障害や発達特性のある子どもたちの支援において、
「落ち着かない」「癇癪を起こす」「指示に従わない」などの行動をどう捉えるかは、支援の質を左右する重要なポイントです。
ここで鍵となるのが、「機能的アセスメント(Functional Assessment)」という考え方です。
これは、行動の背景にある“目的”や“理由”を科学的に分析し、
「なぜその行動が起こるのか?」を理解するための方法です。
行動を単に「良い・悪い」で判断するのではなく、
“その行動が子どもにとってどんな意味を持つのか”を読み解くことで、
支援はより的確で、子どもに優しいものへと変わります。
2. 機能的アセスメントとは何か? ― 行動の“目的”を探る科学的手法

機能的アセスメントは、行動の「見た目」ではなく「機能」に焦点を当てる支援理論です。
アメリカの応用行動分析(ABA: Applied Behavior Analysis)を基盤に、
現在では日本の福祉・教育現場でも広く導入されています。
行動の機能は、大きく4つに分類されます。
| 機能 | 行動の目的 | 具体例 |
|---|---|---|
| ① 要求 | 欲しいもの・活動を得たい | 「お菓子が欲しい」ときに泣く |
| ② 回避 | 苦手な状況から逃れたい | 「勉強をしたくない」ときに席を立つ |
| ③ 注目 | 周囲の関心を得たい | 注意してもらうために大声を出す |
| ④ 感覚 | 感覚刺激を得たい/調整したい | 揺れる、手をひらひらさせる など |
このように、行動は“偶然”ではなく“目的”を持って起きているのです。
3. 機能的アセスメントの3ステップ:行動を「見える化」する
機能的アセスメントは、次の3つのステップで進めます。
ステップ①:行動を明確に定義する
まず「問題行動」とされる内容を、感情ではなく行動の事実として記述します。
×「いつもわがまま」→ ○「課題の時間に席を離れる」
行動を具体化することで、支援者間の認識ズレを防ぎます。
ステップ②:A-B-C分析で行動の流れを記録
行動分析の基本である「A-B-C分析」を用いて、
行動の前後関係を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| A(先行刺激) | 行動の前にあった出来事や環境(例:課題提示) |
| B(行動) | 実際に起きた行動(例:席を立つ、大声を出す) |
| C(結果) | 行動の後に起きたこと(例:課題が中止された) |
この記録をもとに、「子どもは何を得ようとしているのか/避けようとしているのか」を見極めます。
ステップ③:仮説を立て、支援に反映する
分析結果から「この行動は〇〇を得るために起きている」と仮説を立て、
それに基づく代替行動支援や環境調整を行います。
たとえば、
・“逃避”が目的なら、課題量を調整する
・“要求”が目的なら、適切な伝え方(カード・言葉)を教える
という具合に、行動の「理由」に寄り添う支援を行います。
4. 放課後等デイサービスでの活用例

放課後等デイサービスでは、このアセスメントを用いて
「行動の背景をチームで共有」し、子どもの行動改善を図ります。
例①:「課題を始めると逃げ出す」
→ 先行刺激:課題の提示
→ 機能:逃避(難しさによるストレス)
→ 支援:課題の分割・成功体験の積み上げ・タイマーで予告
例②:「大声で叫ぶ」
→ 機能:注目(関わりたい)
→ 支援:望ましい行動で注目を得られる機会を増やす(発言・手を挙げるなど)
例③:「他害・自傷が見られる」
→ 機能:感覚調整
→ 支援:感覚刺激を安全に得られる活動を用意(スウィング・スクイーズなど)
このように、「叱る」「やめさせる」ではなく、
“なぜそうなるのか”に焦点を当てる支援が、子どもの安心と成長を支えます。
5. 支援者と家庭での連携が鍵
機能的アセスメントは、家庭でも活かせます。
おうちでの「できごと記録」や「行動日誌」は、支援現場にとって貴重な資料です。
- いつ・どこで・どんな状況で行動が出たか
- その後、どんな対応をしたか
- 子どもの表情や様子
これを共有することで、家庭と事業所の支援方針が統一され、
「叱る」ではなく「支える」支援が一貫して行えるようになります。


6. まとめ:「行動は、言葉の代わり」

行動には、必ず理由があります。
それは時に言葉よりも雄弁に、子どもの心を語っています。
機能的アセスメントは、
「行動をなくすため」ではなく、
「行動の奥にあるメッセージを理解するため」の支援ツールです。
行動を正しく読み取れば、
叱る場面が減り、子どもが安心して自分を表現できる時間が増えます。
放課後等デイサービスは、まさにその“翻訳者”として、子どもの心に寄り添い続ける場でありたいものです。
【参考】
厚生労働省:「障害児通所支援ガイドライン」


