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なぜ「注意しない療育」の方がうまくいくのか―不衛生行動の裏にある子どもの本音―

支援

はじめに:不衛生行動は「正すべき行動」なのか

放課後等デイサービスの現場では、

・床に寝転がる
・物を口に入れる
・つばを吐く
・鼻水やよだれを拭かない
・手を洗いたがらない

といった 不衛生に見える行動 が日常的に見られます。

多くの職員が、
「注意しなければ」
「やめさせなければ」
と感じるのは自然なことです。

しかし現場経験を重ねるほど、
注意しない方が落ち着く
結果的に行動が減る
という場面も多く見えてきます。

なぜそのような逆転現象が起きるのでしょうか。


1. 不衛生行動は「マナー違反」ではない

まず大切な前提があります。

不衛生行動の多くは、
意図的な迷惑行為ではありません。

・汚いことが分かっていない
・不快にさせていると理解していない
・そもそも気づいていない

発達障害のある子どもにとって、
「衛生的」「不衛生」という概念自体が
年齢相応に育っていないことがあります。

そのため、
マナーとして注意しても届かない
ということが起こります。


2. 注意が逆効果になるメカニズム

2-1. 不安が一気に高まる

不衛生行動を注意された瞬間、

・声のトーンが変わる
・表情が厳しくなる
・距離が近くなる

こうした変化は、
子どもにとって 強い不安刺激 になります。

不安が高まると、

・行動が止まらない
・同じ行動を繰り返す
・別の問題行動が出る

という悪循環が起こります。


2-2. 行動が「学習」されてしまう

注意は、
子どもにとって 強い注目 です。

・自分を見てくれた
・反応してくれた
・関わりが生まれた

その結果、
「この行動をすると反応が返ってくる」
と学習されることがあります。

不衛生行動が
コミュニケーション手段として固定化
してしまうケースも少なくありません。


3. 不衛生行動の背景にあるもの

3-1. 感覚特性

・床の感触が落ち着く
・唾液の感覚が気になる
・手が汚れていても不快を感じにくい

こうした感覚の違いは、
本人の努力では変えられません。


3-2. 情緒の未熟さ

不衛生行動は、

・緊張
・退屈
・不安
・疲労

といった情緒の揺れと
密接に結びついています。

「やめなさい」と言われても、
感情そのものが解決していなければ
行動は続きます。


4. 「注意しない療育」が目指しているもの

4-1. 行動を止めることがゴールではない

注意しない療育は、

・見て見ぬふり
・放置
・何もしない

という意味ではありません。

目的は、
行動の奥にある理由を満たすこと
です。


4-2. 安心できる環境を優先する

子どもが安心している状態では、

・不衛生行動は自然と減る
・周囲を観察する余裕が生まれる
・模倣学習が起きやすくなる

つまり、
「注意」よりも「安心」が先なのです。


5. 実際に行われている支援の工夫

5-1. さりげなく環境を整える

・床に直接座らなくて済む工夫
・口に入れても安全な素材を選ぶ
・手を洗いやすい導線を作る

「行動を止める」より
「起きにくくする」支援です。


5-2. 言葉での注意を最小限にする

・淡々と対応
・感情を乗せない
・短い声かけ

これにより、
行動の“注目価値”が下がります。


6. 注意しないことで育つ力

不思議なことに、
注意されない環境では、

・周囲の子どもを観察する
・真似をし始める
・「次どうするか」を考える

といった変化が見られることがあります。

これは、
社会性が育つ準備が整った
サインでもあります。


7. 保護者が安心する説明の視点

保護者から、

「注意しないのですか?」
と聞かれた際には、

・今は安心を優先している
・理由があって対応している
・成長段階を見ている

という 支援の意図
丁寧に共有することが重要です。


まとめ:不衛生行動は「やめさせる対象」ではない

不衛生行動は、

・困らせるための行動
・しつけ不足
・わがまま

ではありません。

それは、

今の発達段階で精一杯表現している姿
です。

放課後等デイサービスだからこそ、

・注意より理解
・叱責より安心
・即効性より予後

この視点を大切にすることで、
結果的に行動は落ち着いていきます。


【参考】

厚生労働省:「発達障害の特性理解」強度行動障害対応PDF

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