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片付けない・散らかしたままの子どもへの支援法──放デイで育てる整理・実行力

支援

1. はじめに:片付けない・汚したまま…なぜ目立つのか

放課後等デイサービスでは、子どもたちが遊んだ後や活動後に 物を片付けない・使った場所を汚したままにする 行動が目立つことがあります。
大人目線では「片付けなさい」と叱ってしまいがちですが、片付け行動そのものには 論理的理由や発達面の背景がある 場合が多いです。まずは行動の背景を理解し、誤解なく支援を進めることが大切です。


2. 行動の背景を理解する

2-1. 発達特性による「実行機能」の課題

片付け動作は、単なる物理的な作業ではなく、「開始 → 優先順位 → 整理 → 完了」のような複雑な実行機能(Execution Function)が必要です。
発達障害やグレーゾーン傾向のある子どもは、以下のような困難を抱えやすく、結果として片付けが進まないことがあります:

  • 何から手をつけるかが分からない
  • 中断や切り替えができない
  • 目の前の楽しい活動を優先してしまう
  • 手順を覚えられない

これは「わざとやらない」のではなく、脳の情報処理能力の特性によるものです。

2-2. 切り替えが苦手な認知の仕組み

遊びから片付けへの切り替えができないのは、認知のシフトに時間がかかるためです。
言われてすぐに動けないのは、意識して“やらない”のではなく“切り替えが難しい” という特性があるためで、支援者が理解する視点が必要です。

2-3. 興味の優先・動機づけの違い

子どもは自分の興味や楽しい活動が優先されると、片付けは後回しになりやすいです。また、「やらされ感」「叱責」が動機づけの阻害要因になることもあります。
すなわち、片付けは内発的動機(やる気)を育てる支援が鍵 になります。


3. 行動が生まれるプロセス

片付けに取り組まない行動は、次のような心理・行動プロセスで発生することが多いです:

  1. 片付けの目的や「次の活動」が見えていない
  2. 手順が不明確で行動に入りにくい
  3. 行動開始後に他の刺激(楽しいこと)へ注意が逸れる
  4. 大人の叱り・強制がストレスになり回避行動になる

これらはすべて 行動科学的に説明できる現象 で、改善は支援設計・関わり方・環境調整で可能です。


4. 放デイで取り入れたい支援の原則

支援の基本は次のとおりです:

  • 環境を整える:見通し・収納・動線を明確にする
  • わかりやすくする:視覚シンボル・ラベルを活用
  • ステップに分ける:完結できる小さな行動単位にする
  • 肯定的フィードバックをする:「できた」で促進する
  • 一貫性を持つ:どの支援者も同じルールで対応する

これによって、子どもの行動が誘導され、少しずつ習慣化していきやすくなります。


5. 具体的な支援アイデア

5-1. 見える収納とラベル化

何をどこに戻すのかが視覚的にわかるように、収納にラベルや写真を貼ります。
例えば、おもちゃ箱に「車」「絵本」「積み木」の写真を貼れば、子どもは迷わず片付けられるようになります。

5-2. スモールステップと段階提示

片付け自体が大きなタスクに見えると、やる気が阻害されます。
そこで、「まずブロック3つだけ」「本を棚に1冊戻す」など小さなステップに分け、成功の積み重ねを支援します。

5-3. 片付けの役割分担と声かけ

「ここを戻してくれる?」と具体的に指示することで、子どもが迷わず行動できます。また、一緒に片付けをすることで 社会的な役割感・達成感 が生まれます。

5-4. ポジティブ強化と成功体験

子どもが片付けに取り組んだら、すぐに褒める・シールを貼る・時間内にできたら次のご褒美を用意するなど、正の強化を積極的に使います。

5-5. ルールのゲーム化・視覚化

時間を区切るタイマーや「片付けソング」を流すことで、片付けがゲームやリズム活動になり、子どもが楽しみながら取り組めるようになります。


6. ケーススタディ:支援プランの実際

事例A:積み木を戻せない男児
Aくんは、遊び終わった後に積み木を床に散らかしたままにすることが多く、声かけをしても反応が薄い状態でした。
支援者はラベル箱を作成し、最初は一緒に片付け→できたら「よくできたね!」と具体的に承認するアプローチを継続しました。
1ヶ月後、Aくんは自分から「積み木戻す?」と言い、片付けに取り組めるようになりました。


7. 保護者との連携と家庭での習慣づくり

放デイの支援は家庭での継続と強く結びつきます。
保護者には次のようなポイントを共有します:

  • 子どもが片付けられない理由を理解する
  • 一緒に片付ける時間を設ける
  • 声かけは具体的に・短く
  • 成功したら即褒める
  • 自宅でもラベルや収納を共通化する

このような共通ルールで対応することで、子どもの行動は安定していきます。


8. まとめ:整理は人間力 ― 片付けが育てる力

「物を片付けない」「使った場所を汚したままにする」という行動は、単なる怠惰や性格ではありません。
片付け行動には 認知・実行機能・動機づけ・環境理解 が深く関わっています。

放課後等デイサービスでは、子どもの特性に寄り添いながら、一貫した関わり方・環境支援・成功体験の積み重ねを行うことで、片付けの習慣は育っていきます。
これは、単に部屋を整えるだけでなく、自己調整力・計画性・協調性といった人間力を育てる支援でもあります。


参照

「障害児通所支援ガイドライン」:厚生労働省
「発達障害支援の手引き」:厚生労働省

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