はじめに
発達障害児支援において、
「見通しを持たせることが大切」
という話はよく聞きます。
実際に放課後等デイサービスでも、
・スケジュール表
・活動カード
・タイムタイマー
・ホワイトボード
などを活用しながら見通し支援を行っています。
しかし現場では、
こんな悩みも少なくありません。
「先に伝えたら、ずっとソワソワしてしまった」
「○○の時間になるまで待てない」
「見通しを立てたのに今の活動に集中できない」
さらには、
「直前に伝えても動けない」
という正反対のような困りごともあります。
実はこれらは矛盾しているようで、発達障害児の脳の特性を理解すると非常に自然な反応なのです。
今回は、
見通しを立てても落ち着かない子ども
そして
直前の指示でも動けない子ども
について、放課後等デイサービスの現場視点で深掘りしていきます。
「見通しがあれば安心」は本当に全員に当てはまるのか

支援現場では、
「見通し=安心」
という考え方が広く知られています。
もちろん多くの場合は正しい支援です。
しかし実際には、
見通しが安心につながる子もいれば、
見通しが興奮や不安につながる子もいます。
ここを理解することが重要です。
なぜ見通しを伝えると落ち着かなくなるのか
楽しみが強すぎる
例えば、
「今日はおやつの後に公園へ行くよ」
と伝えた瞬間、
頭の中が公園でいっぱいになる子がいます。
すると、
今やっている活動よりも、
未来の楽しみへ意識が向いてしまいます。
結果として、
・何度も確認する
・ソワソワする
・活動が手につかない
・質問を繰り返す
という状態になります。
本人は困らせようとしているわけではありません。
脳内ではすでに次の活動が始まっているのです。
「待つ」がとても難しい子どもたち
発達障害児の中には、
時間の感覚が曖昧な子がいます。
例えば、
10分後も1時間後も、
同じ「あとで」と感じていることがあります。
今と未来が近すぎる

定型発達の人は、
未来をある程度距離感を持って考えられます。
しかし発達障害児の中には、
未来の出来事が今と同じ強さで存在する場合があります。
そのため、
「あとでやろう」
が、
本人にとっては
「今すぐやりたい」
になってしまうのです。
見通しで興奮する子は悪いことなのか
決して悪いことではありません。
むしろ、
興味関心が高いからこそ起きる反応です。
問題は、
その興奮によって現在の活動が難しくなることです。
つまり、
見通しそのものが問題なのではなく、
見通しの出し方を調整する必要があります。
反対に「直前指示でも動けない」理由
ここで多くの支援者が混乱します。
早く伝えてもダメ。
直前でもダメ。
ではどうすればいいのでしょうか。
心の準備ができていない
発達障害児の中には、
急な切り替えが苦手な子がいます。
例えば、
遊びに集中している時に、
「はい終わり!」
と言われても、
脳がまだ遊びモードのままです。
その結果、
・固まる
・無視する
・怒る
・動かない
という反応になります。
本人は反抗しているのではなく、
切り替えが間に合っていないだけなのです。
実は矛盾していない
見通しで興奮する子も、
直前指示で動けない子も、
共通している部分があります。
それは、
時間調整の難しさ
です。
早すぎると待てない。
遅すぎると準備できない。
つまり、
その子に合った予告のタイミングが必要なのです。
放課後等デイサービスでよく見る事例

ケース① 公園が楽しみすぎる
「今日は活動の後に公園だよ」
と伝えると、
30分以上公園の話しかしない。
活動に参加できない。
この場合、
朝から伝えるより、
活動終了10分前に伝えた方が落ち着くことがあります。
ケース② 切り替えができない
「あと1分で片付けね」
と言っても、
全く動けない。
この場合は、
5分前→3分前→1分前
と段階的な予告が有効なことがあります。
支援者が陥りやすい誤解
「分かっているのにやらない」
実はこれが最も多い誤解です。
大人は、
説明したから理解していると思います。
しかし、
理解と実行は別の能力です。
例えば、
宿題をやらなければいけないと分かっていても、
なかなか始められない大人はたくさんいます。
発達障害児はその難しさがより大きいのです。
見通し支援のコツ
① 伝えるタイミングを個別化する
全員に同じ予告時間は適しません。
・30分前が良い子
・10分前が良い子
・5分前が良い子
それぞれ違います。
② 時間を見える化する
「あとで」
ではなく、
・タイマー
・時計
・カウントダウン
を使います。
視覚化は理解を助けます。
③ 待つ練習を少しずつ行う
いきなり30分待つのは難しくても、
1分待つことはできるかもしれません。
成功体験を積み重ねることが重要です。
④ 終わりを予告する
活動開始よりも、
終わりの予告が大切な場合があります。
切り替えの苦手さを減らせます。
本当に大切なのは「その子の時間感覚を知ること」
支援者はつい、
自分の感覚で考えてしまいます。
しかし、
発達障害児の時間感覚は大人と大きく異なる場合があります。
そのため、
一般論よりも、
目の前の子どもを観察することが重要です。
「見通し支援が効かない子」ではない
現場では時々、
「この子には見通し支援が効かない」
と言われることがあります。
しかし実際には、
効かないのではありません。
その子に合った方法が見つかっていないだけなのです。
見通しが必要な量。
予告するタイミング。
視覚支援の種類。
活動内容。
これらを調整することで、
大きく変わるケースは少なくありません。
まとめ

見通しを立てたことで、
かえって落ち着かなくなる子どもがいます。
一方で、
直前の指示では動けない子どももいます。
これは矛盾ではありません。
どちらも、
発達障害児に見られる時間調整や切り替えの難しさから生じることがあります。
大切なのは、
「見通しを与えるかどうか」
ではなく、
「どのような見通しならその子に合うのか」
を考えることです。
放課後等デイサービスの支援においても、
一律の方法ではなく、
子ども一人ひとりの時間感覚や特性を理解しながら支援を組み立てることが求められます。
見通し支援とはスケジュールを見せることではありません。
その子が安心して次の行動へ移れるように橋をかけることなのです。
【参考】
こども家庭庁:「障害児支援に関する施策」、厚生労働省:「発達障害支援施策について」


