はじめに
「ゲームは時間を決めればいい」
「30分と約束したのだから、守らせるのが当たり前」
そんなふうに言われることがあります。
確かに、時間を決めることは大切です。
しかし現場では、タイマーが鳴った瞬間にバトルが始まることが少なくありません。
「あと1回だけ!」
「今いいところなのに!」
声が大きくなり、親も子も疲れ果てて終わる。
そんな毎日を過ごしている家庭は、決して少なくないのです。
今回は、ゲームやスマホを「怒らずに終わらせる」ための考え方と方法について、放課後等デイサービスの現場視点で深掘りしていきます。

ゲームがやめられないのは「わがまま」ではない
まず、大切なことを確認しておきます。
ゲームをやめられないのは、子どもがわがままなわけでも、約束を守る気がないわけでもありません。
「やめられない」の裏側には、3つの力が絡んでいます。
・切り替える力
・見通しを持つ力
・気持ちにブレーキをかける力
この3つが、まだ育ちの途中なのです。
ゲームは、楽しいことが次々に起きるように作られています。
だからこそ、夢中になるのは自然なことです。
大人でも、面白い動画を見始めたら止まらなくなることがありますよね。
子どもにとっては、それが何倍も強い体験なのです。
厚生労働省も、ゲームに関する行動のコントロールができない状態や、ゲームが生活の中心になってしまう状態について、注意が必要だと説明しています。
ただし、これは「やめられない=依存症・診断」という意味ではありません。
日々の困りごととして、切り替えの仕組みを整えていくことが、まず大切なのです。
なぜ「あと5分」が見えないのか
「あと5分で終わりにしよう」
そう伝えたのに、5分後にはまた同じやりとりが繰り返される。
この「あと5分が見えない」ことには、いくつかの理由があります。
楽しみが強すぎる
ゲームの楽しさは、今この瞬間に強く感じられます。
「やめたら楽しいがなくなる」という不安が、終わることをいっそう難しくしているのです。
「あと5分」が見えない
5分という時間は、子どもにとってはあいまいなものです。
目に見えないものを、頭の中で数えて待つのは、大人でも難しいことです。
次が楽しみじゃない
ゲームのあとに待っているのが、宿題やお風呂、寝る準備だけだとしたら。
終わることへの気持ちが、ますます重くなってしまいます。
終わり方が決まっていない
「そろそろ終わり」と言われても、どこで区切ればいいのか分からない。
終わりの合図がはっきりしていないと、子どもは自分のタイミングを探し続けてしまうのです。
放デイの現場から:ケース①②
放課後等デイサービスでも、ゲームの終わりをめぐる場面はよくあります。
ケース①:タイマーが鳴って怒り出す子
タブレットのタイマーが鳴った瞬間、男の子がタブレットを机に置いて言いました。
「まだ終わってないのに!」
職員は、タイマーを止めて、画面に残り時間を指さしました。
「あと1回だけ、ここまでやろうか」
そうして区切りを一緒に決めると、男の子はうなずいて、最後の1回を終えました。
タイマーの音そのものが悪いのではありません。
「突然終わらされた」という感覚が、怒りを生んでいたのです。
ケース②:「あと1回」が止まらない子
「あと1回だけやったら終わる」と言ったのに、1回が2回、3回と続いてしまう子がいました。
職員は、回数を数えるカードを一緒に置きました。
「あと2回分あるよ。終わったら、ここにカードを置いてね」
カードが減っていくのを目で見て、子どもは自分で「終わり」を確認できるようになりました。
「あと1回」という言葉だけでは、子どもには終わりが見えていなかったのです。

支援者が陥りやすい3つの誤解
ゲームの終わりをめぐって、大人がついしてしまう勘違いがあります。
どれも、子どもを責めるつもりがないからこそ、見直す価値があるものです。
・「約束を守る気がない」と決めつける
約束を守れなかったのではなく、守るための見通しや区切りが、まだ足りなかったのかもしれません。
・「取り上げれば終わる」と考える
無理に取り上げれば、その場は終わります。
けれど、次も同じバトルが繰り返されます。
子ども自身が「やめられた」という経験が残らないからです。
・「我慢が足りない」と考える
我慢の問題にしてしまうと、支援の手立てが見えなくなってしまいます。
切り替えの仕組みを整えることが、我慢を強いることよりも先なのです。
今日からできる「終わらせる」5つのコツ
ここからは、家庭でも放デイでも使える、具体的なコツを5つ紹介します。
①始める前に、終わりを一緒に決める
始める前に、「何時まで」「何回まで」を子どもと一緒に決めます。
大人が一方的に決めるのではなく、子どもが「自分で決めた」と感じられることが大切です。
②終わりを、目で見えるようにする
残り時間が目に見えるタイマーや、回数が減っていくカードを使います。
「あと少し」が目で分かると、子どもは心の準備を始められます。
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③時間ではなく、区切りで終える
「30分で終わり」よりも、「このステージが終わったら終わり」のほうが、子どもには分かりやすいことがあります。
ゲームの区切りに合わせることで、終わりが自然なものになります。
④「次」に、小さな楽しみを用意する
ゲームのあとに、おやつや好きな遊び、ほっとできる時間を置きます。
「終わる=楽しいがなくなる」ではなく、「終わる=次の楽しみが始まる」と感じられるようにするのです。
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⑤自分でやめられた瞬間を、見逃さない
自分でやめられたときは、すかさず伝えます。
「自分でやめられたね。すごいね」
この一言が、次の「やめられた」につながります。
うまくいかなかった日があっても、責める必要はありません。
できた瞬間を拾うことが、切り替えの力を育てる近道なのです。
本質の再定義:終わらせることではなく、切り替えられる力を育てること
ゲームをやめさせることが、目的ではありません。
大切なのは、子ども自身が「切り替えられる力」を育てていくことです。
その力は、ゲームの終わりだけでなく、遊びから勉強への切り替え、家から学校への切り替えにもつながっていきます。
大人の役割は、終わりを押しつけることではなく、終わりが見える仕組みを一緒に作ることです。
子どもは、困らせようとしているわけではありません。
終わり方が分からないだけなのです。
まとめ
ゲームがやめられないのは、わがままではありません。
切り替え・見通し・ブレーキの力が、まだ育ちの途中だからです。
始める前に終わりを一緒に決める。
終わりを目で見えるようにする。
区切りで終える。
「次」に小さな楽しみを用意する。
自分でやめられた瞬間を見逃さない。
この5つが、毎日のバトルを少しずつ減らしていく手がかりになります。
終わらせることは、楽しみを奪うことではありません。
次の楽しみへ、安心して橋を渡ることなのです。
【参考】
・厚生労働省「ゲーム依存症」:2019年5月のWHO総会でICD-11にゲーム障害が位置づけられたこと、ゲームに関する行動のコントロールができない状態が特徴であること、相談先は各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターであること
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176279_00001.html

