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「学校に行きたくない」と言い始めた子への、責めない向き合い方 — 朝の登校しぶりを、放デイの現場視点で読み解く

支援

はじめに

「学校は行くもの」

「甘えさせたら、行けなくなってしまう」

そんなふうに言われることがあります。

確かに、学校に行くことは大切です。

しかし現場では、朝の玄関で足が止まってしまう子が少なくありません。

「行きたくない」

「おなかが痛い」

ランドセルを背負ったまま、玄関で立ちすくむ。

声をかけても、うつむいたまま動けない。

そんな朝を過ごしている家庭は、決して少なくないのです。

今回は、朝の登校しぶりについて、放課後等デイサービスの現場視点で深掘りしていきます。


登校しぶりは「わがまま」ではない

まず、大切なことを確認しておきます。

登校しぶりは、子どもがわがままなわけでも、学校をなめているわけでもありません。

登校しぶりと、不登校は同じものではありません。

文部科学省の調査では、不登校は年間30日以上の欠席(病気や経済的な理由による欠席を除く)とされています。

登校しぶりは、その手前の状態です。

朝になると行きたがらない。

遅刻が増える。

行っても保健室で過ごすことが多い。

そんな「つまずき始めのサイン」なのです。

そして、そのサインの裏側には、いくつかの理由が重なっています。

・朝の切り替えがうまくいかない

・学校の一日が見通せない

・音や人、感覚の負荷が大きい

・「行きたくない」の裏にある気持ち

・生活リズムの乱れ

「行きたくない」という一言の裏には、その子なりの理由があるのです。


なぜ朝、つまずくのか

朝の登校しぶりには、いくつかの理由があります。

一つずつ、見ていきます。

朝の切り替えが重い

朝は、1日の中でいちばん切り替えが多い時間です。

起きる、着替える、朝ごはんを食べる、身支度をする、家を出る。

その一つひとつが、子どもにとっては「次の行動へ移る」ことです。

切り替えが苦手な子にとって、朝の流れはそれだけで大仕事なのです。

11月になると、朝は寒くなります。

布団から出るのも、家を出るのも、ますます重くなる季節です。

学校の一日が見通せない

「今日、学校で何があるのか」

それが分からないまま家を出るのは、大人でも不安なものです。

時間割が変わる日。

苦手な授業がある日。

行事の練習が入っている日。

そんな日は、朝から気持ちが重くなります。

見通しが立たないと、玄関で足が止まるのです。

音や人、感覚の負荷が大きい

学校は、感覚の刺激が多い場所です。

チャイムの音。

休み時間のざわめき。

たくさんの人の気配。

給食のにおい。

感覚の受け取り方に特徴がある子にとって、これらは「慣れるもの」ではなく「毎日こなす負荷」です。

「学校が嫌いなのではなく、学校の刺激が多すぎる」

そう読み解くこともできるのです。

「行きたくない」の裏にある気持ち

「行きたくない」の裏には、さまざまな気持ちが隠れています。

友達とのことが気になっているのかもしれません。

先生に注意されたことが、まだ心に残っているのかもしれません。

授業についていけない不安があるのかもしれません。

あるいは、ただ疲れているだけなのかもしれません。

文部科学省の令和6年度の調査では、学校が把握した不登校の要因として、「学校生活に対してやる気が出ない等の相談」が30.1%、「生活リズムの不調に関する相談」が25.0%、「不安・抑うつの相談」が24.3%とされています。

生活リズムの乱れ

夜更かしが続いている。

朝、なかなか起きられない。

そんなとき、登校しぶりは起きやすくなります。

2学期も後半に入り、疲れがたまってくる時期です。

「気持ちの問題」として片づける前に、眠れているか、食べられているか、体調はどうか。

体の状態を見ることも、大切なのです。


放デイの現場から:ケース①②

放課後等デイサービスでも、登校しぶりの相談はよくあります。

ケース①:放デイには来るのに、学校に行けない子

朝は学校に行けなかったのに、午後は放デイに元気に来る子がいました。

「学校が嫌いなの?」と聞くと、首を横に振ります。

「学校は、朝からずっといなきゃいけないから、疲れちゃう」

放デイは、短い時間です。

学校に行けないのは、学校そのものが嫌いだからではありませんでした。

「長い時間、見通しの立たない場所にいること」が、重かったのです。

この子の場合、「学校に行く・行かない」の二択ではなく、「何時間目から行く」「保健室から始める」という小さな選択肢が、次の一歩になりました。

ケース②:月曜日の朝だけ、動けなくなる子

月曜日の朝だけ、玄関で動けなくなる子がいました。

火曜日から金曜日は、自分で起きて、自分で準備ができます。

週末の過ごし方を一緒に振り返ると、週末は夜更かしをして、月曜日の朝だけ生活リズムが崩れていることが分かりました。

「月曜日が嫌いなのではなく、月曜日の朝だけ、体がまだ週末のままだった」のです。

週末の寝る時間を少しだけ整えると、月曜日の朝の立ちすくみは、少しずつ減っていきました。

支援者が陥りやすい3つの誤解

登校しぶりをめぐって、大人がついしてしまう勘違いがあります。

どれも、子どもを責めるつもりがないからこそ、見直す価値があるものです。

・「甘えている」と決めつける

「甘え」という言葉で片づけてしまうと、その裏にある理由が見えなくなってしまいます。

子どもは、困らせようとしているわけではありません。

困っているから、サインを出しているのです。

・「無理に行かせれば、慣れる」と考える

無理に行かせれば、その日は行けるかもしれません。

けれど、次の朝はもっと重くなります。

「行けた」という経験より、「つらかった」という記憶が残ってしまうからです。

・「行けない=学校が嫌い」と考える

「学校が嫌い」だと決めつけてしまうと、支援の手立てが「学校に行かせること」だけになってしまいます。

行けない理由は、学校の中だけにあるとは限りません。

理由が分かれば、学校以外にもできることが見えてきます。


今日からできる「向き合う」5つのコツ

ここからは、家庭でも放デイでも使える、具体的なコツを5つ紹介します。

①まず、話を聞く。「行く・行かない」を決めつけない

「行きたくない」と言われたとき、まず大切なのは、話を聞くことです。

「どうして?」と問い詰めるのではなく、

「そっか、今日は行きたくないんだね」

と、気持ちを受け止めます。

気持ちを受け止めてもらえた子どもは、少しずつ、自分の言葉で話し始めます。

②朝の見通しを、目で見えるようにする

「今日は、何時間目から何があるのか」

それを、絵カードやスケジュールボードで目に見える形にします。

「全部」ではなく、「今日の午前中だけ」「1時間目だけ」でも構いません。

見通しが立つと、子どもは「分からないもの」に向かうのではなく、「分かっているもの」に向かって歩けます。

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③「学校」ではなく、「今日の1時間」から考える

「学校に行く」という大きなまとまりで考えると、子どもには重すぎます。

「1時間目だけ行ってみる」

「保健室から始めてみる」

「給食の時間だけ行ってみる」

そんな小さな単位に分けることで、子どもは「できそう」と感じられます。

小さな「行けた」の積み重ねが、次の「行けた」につながります。

④行けた日・行けた部分を、見逃さない

行けた日は、すかさず伝えます。

「今日は自分で行けたね」

「1時間目から行けたね」

行けなかった日があっても、責める必要はありません。

「玄関まで行けたね」

「ランドセルを背負えたね」

行けた部分を拾うことが、子どもの「行ける」という感覚を育てます。

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⑤学校・放デイ・家庭で、情報を共有する

登校しぶりは、家庭だけで抱えるものではありません。

学校の先生、放デイの職員、スクールカウンセラー。

「朝の様子」「学校での様子」「放デイでの様子」を、少しずつ共有します。

担任の先生に伝えるときは、「行けません」だけでなく、「朝はこんな様子です」「こんな工夫をしています」と、具体的に伝えると話が進みやすくなります。

大人が同じ方向を向くことが、子どもの安心になります。


本質の再定義:登校させることではなく、安心して社会とつながる力を育てること

登校させることが、目的ではありません。

大切なのは、子ども自身が「安心して社会とつながる力」を育てていくことです。

文部科学省の通知(令和元年10月25日)でも、不登校の支援は「学校に登校する」という結果だけを目標にしないとされています。

大人の役割は、子どもを学校に押し込むことではありません。

子どもが「行ってみようかな」と思えるだけの安心を、一緒に作ることです。

子どもは、困らせようとしているわけではありません。


まとめ

登校しぶりは、わがままではありません。

朝の切り替え、見通し、感覚の負荷、気持ち、生活リズム。

いくつもの理由が重なって、朝の足が止まるのです。

まず、話を聞く。

朝の見通しを、目で見えるようにする。

「学校」ではなく、「今日の1時間」から考える。

行けた日・行けた部分を、見逃さない。

学校・放デイ・家庭で、情報を共有する。

この5つが、朝の立ちすくみを少しずつ軽くしていく手がかりになります。

令和6年度の不登校の小中学生は353,970人で、過去最多となりました。

12年連続で増えています。

だからこそ、登校しぶりは「特別な家庭の問題」ではありません。

多くの家庭が、同じ朝を過ごしているのです。

登校しぶりは、子どもからの手紙です。

「今のままでは、ちょっとつらいよ」という手紙です。

その手紙を、責めずに受け取ることから、支援は始まります。


【参考】

・文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(2025年10月29日公表、2026年1月16日一部修正):不登校の小中学生は353,970人(小学校137,704人、中学校216,266人)で過去最多、12年連続増加。学校が把握した要因は「やる気が出ない等の相談」30.1%、「生活リズムの不調」25.0%、「不安・抑うつ」24.3%。新規不登校は153,828人で9年ぶりに減少
https://www.mext.go.jp/content/20260305-mxt_jidou02-100002753_3.pdf

・文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日):不登校の支援は「学校に登校する」という結果だけを目標にしないこと
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm

・総務省「不登校等のこどもの健康診断に関する調査」(令和8年10月22日公表):抽出した小中学校52校の調査で、中学校の不登校のこどものうち19.9%が令和7年度の学校健診を1科目も受けていなかったことなどを公表。こども家庭庁・文部科学省・厚生労働省に通知

・こども家庭庁「こども家庭審議会障害児支援部会(第22回)」(令和8年10月28日開催):議題は令和9年度障害福祉報酬改定の議論の状況について。改定内容は検討中で、決定したものではない
https://www.cfa.go.jp/councils/shingikai/shougaiji_shien/779b0299

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